昨夜の鳩山首相の会見は見事だったと思う。
冒頭の首相からの発言をNHKニュースでリアルタイムに視た(ということはマスコミによって切り貼りされていない「素データー」を視たわけである)。これは実に丁寧な「謝罪会見」であり、リスク・マネージメントの観点からも大いに教材とするに足るものであった。確かにアメリカ第3海兵遠征軍が「抑止力」であることの説明は(さっぱり)なかったし、首相会見を視て今後「普天間から辺野古への飛行場移設が着実に行われるであろうこと」を確信した日本国民は皆無に近いと思われる。でも「本当にごめんなさいね」という気持ちは良く伝わって来たのである。彼はたぶん悪い人ではないのだろう。
ところが翌朝の新聞にはこの記者会見内容は、頭を下げている首相の写真とともにフロントページに編集された「記事」として掲載されている(朝日新聞の場合)。朝日新聞のHP(asahi.com)には「記者会見要旨http://bit.ly/dfBEvS」として掲載されているが、ですます調が切り口上に加工されておりその分印象が悪い。同紙は4面には「日米共同宣言」「閣議決定」を全文掲載しており、その扱い方は真に対照的である。会見が午後9時開始だったので全国紙の場合「降版に間に合わなかったのだ」という言い訳が聞こえてきそうだが、思うにそれは言い訳である。恐らく「首相会見」の内容を切り貼りして自らの観点から報道することが、全文を掲載することよりも優先されると考えたのであろう。すなわち同紙は「首相は真摯に謝罪した」という「事実」よりも、「首相への失望が広がっている」という「報道」を優先したと断じるのである。朝日新聞は政権交代当初は本当に恥ずかしいぐらい鳩山政権フレンドリーであった。系列の週刊朝日の検察ファシズム批判は痛々しいほどであった。しかしこのところは手のひらを返したような対応ぶりである。
しかしもっと罪深いのは民主党内に存在する「グアム・テニアン移設推進派」のはしゃぎぶりである。今朝のみのもんた氏の番組で推進派の某議員が「辺野古移設なんて出来っこない」とのたまい、自民党の石波政調会長を激昂させていた。石波氏は某議員に対し「安全保障を担当する与党議員としてあるまじき態度」と激昂したようにみえるが、実は「おまえ自分のところの党首が国民に頭を下げているときに、そんなこと言うのかよ」という彼の自民党旧田中派としての「義理人情の琴線」に触れたのではないかと推測するのである。第3海兵遠征軍のグアム・テニアン全面移転などという戦略は議員がパフォーマンスとして行うべきものではない。外交・安全保障さらにはインテリジェンスのプロが水面下でしっかり地ならしをした後で、秘密裏に政治家が彼の国の中枢と交渉すべき事柄である。政治家が選挙運動のパフォーマンスよろしくテニアンの首長さんの御機嫌を伺ったところでそんなのを「政治主導」とは言わないのである。
アメリカは沖縄県民の少なくとも過半数が了とされるまで具体的な移設には入らないであろう。つまり沖縄県民の怒りが収まらぬ限り辺野古移設は遅々として進まない。今まず政府与党がすべきことは沖縄・徳之島の人々に説明し謝し続けることのみである。説明と謝罪の限りを尽くしても沖縄県民の怒りが収まらぬようであれば、それでもアメリカは日本政府に何とかしろとは言わないのである。日米安保騒動のような状況は今の衰えたアメリカには最悪のシナリオである。どうせバイアスのかかった記事を載せるのならばそこら辺を十分に考察した記事を載せれば良いと思われるし、そのあたりの機微がわからない吾人に国会議員のバッチをつける資格はないのではないか?あんたたちは何処の国の新聞社で何処の国のどの党の議員なんだよ。