政府はどうも先の日米合意の辺野古沿岸移設案に戻すということで、5月末決着を無理やり実現しようとしているようだ。衆議院選挙前、鳩山代表は先の考えなく「攘夷実行」を国民に誓ったのであるが、到底アメリカを納得させることは出来ず(というかいささかも戦略的に動いていないのは明白だが)、「沖縄の皆さん済みませんでした」と「攘夷断念」を告げるために沖縄を再訪するようである。しかし「5月末決着」という期限は一応果たしたことになるので、首相は当面辞任はしないだろう。結果当然沖縄県民をはじめ国民は激怒するので支持率低下は避けられず、社民党・国民新党は連立を離脱するから政局は一気に流動化する。レームダックになった鳩山政権は支持率が10%を切ったところで総辞職、管副総理か前原国交相を代表に選出、首班指名していちおう民主党単独政権は維持する。時間差で小沢幹事長も辞任して傀儡「サプライズ幹事長」を立て、自分は「選挙委員長」に降格し参院選の指揮は執り続ける。来る参院選で民主党は大敗し参院選後は逆ねじれ状態になるが、自民党も議席を伸ばすことはないだろうから、政界再編ということになる。
昨年の政権交代は実は「幻覚」であり旧福田派から旧田中派に政権が移行しただけである。未来の歴史家は21世紀最初の十年を角福戦争NEOの時代と呼ぶだろう。つまり(勝手にルサマンチンを抱いて「郵政改革」を武器に自民党内の旧田中派を一掃した小泉純一郎の怨念により)ぶっ壊された自民党から、(親父田中角栄のようになれそうにないため早々と93年に自民党を飛び出した小沢一郎がやっと念願かなってプチ角栄として君臨できるようになった)丸ごと田中派そっくりさんたる民主党に政権が移行しただけだ。しかし双方に桂園時代のように交互に政権を担当する能力はない(小泉は引退しているし、小沢はあくまでプチ闇将軍だから)ので今度はさすがに政界再編となるわけである。まず①親米自主憲法制定を綱領にした保守政党「立ち上がれ改革自由民主党」と②公務員制度改革・仕分けをメインのアジェンダ(式次第という意味のこの言葉は使いたくないが)にした「みんなの民主党」、そして③反米護憲左派を中心とした「社会民主平和党」あたりに落ち着くんだろう。そして①②がガッシンして「自由民主党」③は「社会党」になり、晴れて55年体制が復活するのである。宗主国たるアメリカと近隣の中国・韓国もそれを望んでいるのである(北朝鮮も口撃する相手が絞れてよいであろう)。
普天間問題に話を戻すが、辺野古沿岸への移設は沖縄県民が体を張って阻止するだろうから、事実上普天間移設は「先送りソリューション」となることは間違いない。しかし普天間の海兵隊は何に対する抑止力なのか?という議論のキモが語られていないように思われる。すなわち日本の「仮想敵国」はどこなんだよということである。北朝鮮ならばむしろ自衛隊中央即応集団と連携できるように本土に移設し、西日本の日本海沿岸の防衛(具体的にはテロ対策)に参画してもらうことが一番「抑止力」たりうる。海兵隊は基本的に攻めていく際の先鋒部隊だがあの程度の部隊ならテロ対策ぐらいしか出来ないんじゃないか。一方アメリカの「仮想敵国」の一つは中国なのだろうが(アメリカは当然世界No2を仮想敵国と認識する)、宜野湾の空軍と仲が悪く普天間に寡少なヘリ部隊しかいない海兵隊が対中国の先鋒部隊足りうるとは思えない。ひょっとしてアメリカ海兵隊の「仮想敵国」は日本なのではないか?だからあそこまで日本で態度悪いんじゃないかと思われる。辺野古に移設するにしても海兵隊がどうして日本に要るのかよということを「仮想敵国」を明示して誰か教えて欲しい。